イン・ザ・プール
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空中ブランコ
空中ブランコ


精神科医、伊良部一郎シリーズの連作短編です。

伊良部医院の跡取り(なのに診察室は地下)肥満した体躯に稚気溢れる男、伊良部一郎。
彼の元を訪れる様々な悩みを抱える個性的な患者達。
空中ブランコに飛び移れないサーカスのベテラン、先端恐怖症のやくざ、
携帯依存症の高校生、思った通りの所にボールの投げられないプロ野球選手…
深刻に症状を訴える彼等に対し、伊良部は飄々とマイペースで子供のように無邪気。

唯一の他のスタッフもまともじゃない雰囲気。
やけに色っぽい看護婦マユミはやる気も愛想もなく雑誌をめくる。

伊良部は何故か必要のない注射を鼻息荒く迫る、
看護婦マユミはけだるそうに太腿も露わに注射を打つ。異様な空間の地下の診察室。
そんな彼等の、常識はずれの診察に患者達は驚き、惑い、苛立つ。
しかしいつしか伊良部のペースに巻き込まれ癒されて行く自分に気付く…

文体が読み易く会話はテンポよくポンポンと進み
スラスラグイグイ読み進めてしまいます。
読み易いからといって文章が軽薄すぎる事はなく
そのさじ加減は伊良部の患者に対するスタンスと同じくらいの絶妙さ。
(患者に薄情すぎてもおかしいし実は真面目ってなってもいやらしいよね)

兎に角面白い。その上
実際自分が、小説の登場人物の患者と同じように
強迫性障害や先端恐怖症、携帯依存症などじゃなかったとしても
1話読み終わる頃には、患者と同じように晴れやか、癒された気分になる、
そんな不思議な味わいの小説だと思います。